ユベントスVSトレビーゾ
セリエA第十三週
勝利3-1。
トレビーゾは中盤でのプレスをあきらめ、ゴール前に張って決定的なシュートを防ぐ作戦をとった。無謀なタックルなしにユベントスの攻撃を何度も跳ね返したことは賞賛に値する。しかし、この日のユベントスはトレビーゾの頑張りを越えて好調だった。
24分にパラビチーニのゴールで先制を許したが、ユベントスは落ち着いていた。試合開始直後からユベントスの各選手は動きに切れがあった。特に何度も楽々と相手陣内に侵入し的確なラストパスを供給するZambrottaの動きは素晴らしかった。焦らずともチャンスが巡ってくることをユベントスは確信していた。
ユベントスの一点目は、Mutu。CamoranesiからパスをうけたIbrahimovicが見事なグランダーのパスを出し、それをMutuが流し込んだ。ここまでゴール近くで厳しいチェックに遭っていたIbrahimovicは、このとき相手ディフェンダーの裏をかく、右遠目のポジションをとっていた。距離はあったが、プレッシャーのないこの位置にいたことが、絶妙なラストパスを可能にした。
二点目、ユベントス逆転のゴールはTrezeguet。一点目とは反対の左サイドからのChielliniのラストパスを押し込んだ。ユベントスは前半のうちに、逆転に成功した。
後半途中からNedvedが登場。ボールの動きが目立って良くなる。これ以降、トレビーゾはまったくチャンスらしいチャンスが作れなくなった。後半37分同じく途中出場のDel Pieroが三点目をあげる。これで勝負あり。
久しぶりに先発したブラージュの、なりふりかまわぬ献身的な守備もユベントスの勝利に貢献していた。
Capello7、Abbiati6.5、Thuram7、Zambrotta7、Cannavaro7、Chiellini7、Emerson7、Vieira6.5、Blasi7、Camoranesi7、Trezeguet7、Ibrahimovic7
ユベントスVSブリュージュ
チャンピオンズリーグ グループステージ 第五戦
勝利1-0。
ブリュージュは、後半足が止まっていた。中盤でNedvedを自由にしたら何が起こるか?そんなことも考えられなくなっていた。Nedvedは楽々と見事なボールを、Del Pieroに供給する。Del Pieroが頭で落として、これが決定打(後半34分)。
今日のユベントスにはがっかりした。守りの弱い相手なのに、シュートを入れられない。前半8分にはNedvedが外した。15分にはDel Pieroが外した。35分にはTrezeguetが外した。後半3分にはVieiraが外した。後半11分にはEmersonが外した。相手のDFやGKのファインプレイのせいではない。プレッシャーの少ない、外してはならない状況のシュートばかりだった。もしこの試合勝てなかったらと思うと、ぞっとする。
交替で入った、MutuもZalayetaも同じ。控えから抜け出すために、Capelloへアピールしたいはずの彼らも、決められない。MutuはNedvedからのボールを後半39分に外し、Zalayetaは同じくNedvedからのボールを45分に外した。
揃いも揃ってなんてことだろう。
Capello7.5、Abbiati6、Thuram6、Zambrotta6、Cannavaro6、Chiellini6、Emerson6、Vieira6、Nedved6.5、Camoranesi6、Trezeguet6、Del Piero7
ローマVSユベントス
セリエA第十二週
勝利1-4。
最初の二点でローマの闘う心は粉砕された。その過酷さに、皮膚が薄く剥がされていくような感触を味わった。
ユベントスのメンバーは最初からコンディションがよく、ボールは良く動いていた。ローマは中盤のプレスを強くしてそれに対抗する。一進一退の攻防が続く。48分までユベントスは何度もチャンスを作りながらゴールを決められなかった。入れるべきときに点が入らないと、そのチームには目に見えない粘着質のベールが降りてきて、やがて足が止まり、反撃を受けることになる。前半修了間際、ユベントスには「イヤな雰囲気」が立ちこめつつあった。逆にローマの方は、勝利の匂いを嗅ぎ始める。「イヤな雰囲気」を一瞬にして、きれいさっぱりと拭いさったのがNedvedのヘディングシュートだった。Camoranesiがサイドからあげたボールを、ローマのディフェンスが無警戒だった背後のポジションから、瞬時に走り込みジャンプし、頭でヒット。ユベントスの攻撃に長時間耐えていたローマの希望が、この得点で死んでしまった。
後半、ローマは勝負にでる。最初の十分間、ローマは総力をあげてユベントスを攻め立てた。クリアしてもクリアしても、ローマの攻撃の手は緩まない。ローマの選手に得点の予感が生まれ、予感が彼らのプレーを加速する。同点は時間の問題に思われた。Nedvedに叩き壊されたものが、甦りはじめていた。始点はVieiraのロングパスだった。このパスを受けたIbrahimovicが信じられないプレーを見せ、ローマの希望は二回目の決定的な死を迎える。Ibrahimovicはファーストタッチで、パスを山なりの弾道に変化させた。ボールの落下点へと殺到するスピードでローマのDFは置き去りにする。あとは突進してくるキーパーとの一対一の勝負。Ibrahimovicはキーパーの手がボールに届くタイミングを読んで、それよりほんの少し早いタイミングで、ボールを強く蹴る。無人のゴールマウスにボールが吸いこまれていった。
Trezeguetによる三点目と四点目はもうどうでもいい。すでに死体となっているチームへのだめ押しは、正視できない残酷さを孕んでいることだけ、確認すればそれでよい。
この日のユベントスは敵をメンタルの奥深くまで破壊する術を知っている残忍で強力なチームだった。
Capello7、Abbiati6.5、Thuram7、Zambrotta6.5、Cannavaro7、Chiellini6.5、Emerson6.5、Vieira7、Nedved7.5、Camoranesi7、Trezeguet7、Ibrahimovic8
ユベントスVSリボルノ
セリエA第十一週
勝利3-0。
リボルノは勝負へのこだわりが薄かった。絶対に攻めるという気迫も、必ず守るという覚悟もない。これではユベントスの敵にはなれない。
案の定、リボルノのパフォーマンスが落ちた後半は、ユベントスの得点ラッシュになった。
前半からいつもの的確なプレーで、危険をことごとく摘み取っていたThuramが前線出張、Ibrahimovicに見事なボールを渡し、一点目。二点目はZambrottaからTrezeguet。途中交替のDel Pieroがドリブルでもちこみ三点目。
Mutuに替わって後半投入されたCamoranesiが、リボルノのFWルカレッリと衝突するシーンがあった。筆者はCamoranesiを支持する。ルカレッリはCamoranesiの髪の毛を、故意に強引に引っ張るという悪質ないやがらせを行った。別にゴール前ではない。ファールの許されるタイミングでは全然ない。Camoranesiは怒り、ルカレッリにボールを蹴りこむ。クリーンヒットしなかったボールがワン・ツーでルカレッリに戻される。この瞬間にCamoranesiが再度のアタック。ルカレッリは足首をスパイクで削られる。サッカーはテニスではない。ボールを使った格闘技だ。必要があれば手をだすことも必要だ。Camoranesiの強さは筆者には魅力だ。
Capello6.5、Abbiati6、Thuram7、Zambrotta7、Cannavaro7、Chiellini6.5、Emerson7、Vieira6.5、Nedved6、Mutu5.5、Trezeguet7、Ibrahimovic7
ユベントスVSバイエルン
チャンピオンズリーグ グループステージ 第四戦
勝利2-1。
ミドルシュートではない。強力なバイエルンのDFが密集しているゴール前から、Trezegueが決めた。しかも二回。蹴り方はいつも同じ。ボールが回転して変化するわけでも、意表をつく高さにホップするわけでもない。並の強さの素直なボールがゴールまでまっすぐ進む。なのに誰も止められない。Trezeguetは誰にも対応できないコースにボールの角度を急旋回させることができる。秘密は回転のスピードとキックのタイミングのみ。FWなら誰でも持っている技術をTrezeguetは徹底的に磨きあげ、技術のクオリティを変えてしまった。バイエルンの強力な壁を真っ向勝負で打ち砕く。これなら他の強豪相手であっても、互角以上の勝負ができる。
今日のユベントスは、バイエルンとくいのサイド攻撃を封じきり、チャンスらしいチャンスを相手に与えなかった。Vieiraが戻ってくると中盤の動きが見違えるほどよくなる。Vieira本人は、好調時とは比べものにならないほど、コンディションが落ちているのに、不思議なことだ。
ミラン戦敗北のあとのいやなムードを払拭する、大事な勝利だった。
Capello6、Abbiati6、Thuram6.5、Zambrotta6.5、Cannavaro6.5、Chiellini6、Emerson7、Vieira6.5、Nedved6、Mutu5.5、Trezeguet7、Ibrahimovic6.5
ミランVSユベントス
セリエA第十週
敗北3-0。
筆者はこの試合を見たあと、何もやるきにならず不貞寝してしまった。
こんな筈ではと思い、なぜと煩悶する。
ユベントスは良いメンバーで良いパフォーマンスを繰り広げた、だのに負けてしまった。ユベントスは強いが、この試合のミランはそれ以上に強かった。
ミランには好機は一つもなかった。
しかし彼らは、前半14分のセードルフ、26分のカカ、45分のピルロと得点を重ねた。セードルフのシュートはThuramの足に当たっていなければ得点にならなかった。カカのシュートはTrezeguetのクリアーミスがなければ打てなかった。ピルロのFKはChimentiが充実していれば止められる可能性もあった。
ユベントスには明らかなチャンスがあった。何度もあった。たとえば、前半36分のZambrottaのミスキック。また後半15分のNedvedのシュート。ミランはチャンスのない所で得点し、ユベントスはチャンスを作れたのにそれを生かせなかった。
勝つ力がミランの方が上回っていた。
ミランはおきれいな戦術を捨て去っていた。去年のチャンピオンズリーグの決勝でジェラート一人にひっくり返された苦い経験からしっかりと学んでいる。意志と技術が結晶化した個人の力は、想定を越えることをミランの選手は体で覚えてしまっている。マルディーニの徹底した執拗なIbrahimovicへのマークは、これを体現していた。ガットゥゾのなりふりかまわぬ激しいタックルもそうだ。
ユベントスにはこれはない。
相手プレーヤーへの畏怖の念がミランのディフェンスの質を変えた。名選手の力を読むなどという傲慢は致命傷になる。相手を恐れ、恐れるがゆえに、つぶしは徹底的にしなければいけない。
今日の格の違いを見せつけられた敗戦が、ユベントスのディフェンスを変革させる起爆剤になることを祈る。
でないとファンは救われない。
Capello5.5、Chimenti6,Thuram6.5、Zambrotta6.5、Cannavaro6.5、Pessotto6、Emerson7、Vieira6.5、Nedved6、Camoranesi7、Trezeguet6.5、Ibrahimovic6.5
ユベントスVSサンプドリア
セリエA第9週
勝利2-0。
トップギアの持続時間が違う。疲労に打ち勝ちトップスピードでの動きを維持する力が勝負を分けた。前半はサンプドリアは、攻守に渡って素晴らしいパフォーマンスをみせた。中盤からチエックは厳しく、ユベントスは苦し紛れの遠目からのシュートしか打てなかった。攻撃でも、素早く正確なセンタリングで、ユベントスのゴールを脅かした。特に前半44分のボナッツォ-リのジャンプシュートは、瞬間、やられたと叫んでしまったほど、見事だった。
しかし、ユベントスは敵を上回るパフォーマンスを90分持続する離れ業をやってのける。中でもNedved、Mutuは今期最高の動きをみせた。Nedvedは、中盤のあらゆる場所で、サンプドリアのボールを、徹底的に追い回し敵のチャンスの芽をことごとく摘み取ってしまった。ポジションチェンジなどという生やさしい言葉では表せない。中盤のあらゆる場所がNedvedのポジションだった。
パルマ時代のMutu(FW。パスを待ち、瞬間的スーパープレイで得点奪取)とは別種のパフォーマンスを今日のMutuは披露した。守備面での的確な動き、パスの出してとしての高い能力には目を見張るものがあった。役割はCamoranesiと同じなのだがスタイルが違う。Camoranesiのパス、動きが曲線的なのに対して、Mutuのそれは直線的だ。ゴールへのアプローチもCamoranesiがミドルシュートを得意とするのに対して、Mutuはドリブルで持ち込んでのシュートを得意とする。ユベントスはCamoranesiと同等の決定力をもつMFを手にいれた。スタイルの大きく異なる二人が途中交替で登場するようになると、敵は絶望的に難度の高い守備を強いられることになる。
ユベントスの得点は前半40分コーナーキック。Mutuの蹴った絶好球をTrezeguetがシュート。二点目は後半12分。Emerson、Del Piero、Trezeguet運ばれたボールをMutuがドリブルでもちこみシュート。
バイエルン戦にこのパフォーマンスがなかったことが悔やまれる。
Capello6、Chimenti6.5,Kovac6.5、Zambrotta6.5、Chiellini6.5、Cannavaro6.5、Emerson7、Giannichedda6、Mutu7、Nedved7、Trezeguet6.5、Del Piero6.5
レッチェVSユベントス
セリエA第8週
勝利3-0。
チャージ、そしてチャージ、またチャージ。レッチェは90分間、一瞬も休むことなくユベントスの選手に当たりに行っていた。Nedved、Ibrahimovic、Del Piero、Mutu、みんな地面に転がされた。何度倒れても立ち上がるNedvedを見るいると、強こそ勝利の基盤であることを思い知らされる。
ユベントスの一点目はIbrahimovic。ドリブルで持ち込み、シュート。レッチェのディフェンダーが一人近くにいたが相手にもしなかった。Ibrahimovicらしいキングシュート。
二点目はMutu。Zalayetaが頭で落としたボールに反応し、シュート。Mutuはこの試合、三度も絶好機を逃していたので、どうしても決めておきたいシュートだったに違いない。
三点目は終了間際のZalayetaのゴール。今期の初得点。Camoranesiがドリブルでもちこみ、状況をよくみて、Zalayetaがマークを外したところで、パス。これをゴールの左隅に低い弾道で突き刺す。
レッチェはボールを奪っても、それをキープする力が弱い。レッチェのスピードならGiannicheddaも充分に働ける。Emersonは楽になり、バイエルン戦では見られなかった攻撃参加の機会が増えた。パスもよく周り、シュート機会は豊富。三点差以上の実力差があった。
Capello6.5、Abbiati6,Cannavaro7、Kovac6.5、Zambrotta7、Chiellini6.5、Emerson7、Giannichedda6、Mutu6.5、Nedved6.5、Ibrahimovic6.5、Del Piero6
バイエルンVSユベントス
チャンピオンズリーグ グループステージ 第三戦
敗北2-1。
ボランチがディフェンスに終始し、アッタックポイントを決定できないとき、ユーベの攻撃力は激減する。IbrahimovicもTrezeguetもボールがこないことには仕事はできない。Emersonが的確なパスを送るために必要な余裕を、Giannicheddaは与えることができなかった。
バイエルンは両サイドが強力なチームだ。Zambrottaはボールを扱うテクニック、相手との格闘技どちらの面でも素晴らしかった。そのZambrottaにしても、突破できないほど、バイエルンのサイドは堅い。
得意なサイド攻撃が機能せず、中盤が弱体となると、あとはバックスから、ロングボールをフィードするしかない。ところが、今日のユベントスは、いたずらにバックパスを繰り返すシーンが多く、中盤を飛ばして思い切って前線にボールをフィードすることをしなかった。
前半、バラックのシュート、FKと二回ボールをとめたAbbiatiも、右のMFダイスラーの意図を読み間違え(直接のシュートはないと思った)ゴールを許してしまう。ここだけとれば不味いプレーだったが、前半後半にそれぞれ一度ずつあったバイエルンの怒濤の攻めの時間を、一点でしのぎきったのだから、Abbiatiはまずまずのプレーをしたといえる。敗因をAbbiatiだけに押しつけるのは間違っている。鋭く正確なセンタリングを繰り返し送り込むことのできるバイエルを相手に、失点ゼロは不可能に近い。それ以上に点を取ることを考えるほうが現実的だ。
後半終了間際のユベントスの得点はFKから。Del Pieroが触れば一点という良いコースに放り込み、それをEmersonがヘディングで落とし、落ちてくるボールをダイレクトでIbrahimovicが叩く。見事なゴールだった。
中盤が弱いときどう前線にボールを送るか、それが今のユベントスの課題だ。手を負傷し、後半は脚を痛めていたGiannicheddaの交替要員がいない。苦しい。Vieiraの一日も早い復帰が望まれる。
Capello6、Abbiati6,Cannavaro6、Thuram7、Zambrotta7、Blasi6、Emerson6.5、Giannichedda5、Camoranesi6.5、Nedved6.5、Ibrahimovic6.5、Trezeguet6
ユベントスVSメッシーナ
セリエA第7週
勝利1-0
ユベントスの抜け殻の試合を見ているようだった。奪取したボールを、たった一つの意志に従って、壁を砕く、これがユベントスの攻撃だった。試合のある瞬間に、強烈なストロボ光のように閃く一つの意志。この意志が消滅してしまっていた。
幸い、ディフェンスは、Cannavaro、Thuram、Abbiatiが安定しており、メッシーナにつけいる隙を与えず、一点を守ることができた。
メッシーナは自陣に引かず、中盤からボールに厳しく行くというディフェンス。ユベントスはゴール近くでは広いスペースをもらえない。前半25分のDel Pieroのゴールは、このメッシーナのディフェンスを技術で越えて奪取したもの。メッシーナのゾロのボールをインターセプトしたDel Pieroは、瞬時に加速。ゾロは体を返して全速力で追うが間に合わない。Del Pieroは三歩でトップスピードへ。メッシーナの左サイドバックのクリスタンテは、突っ込んでくるDel Pieroに何ら有効なディフェンスができず、棒立ち。Del Pieroが脚を振り抜きボールはゴールマウスへ突き刺さる。クリスタンテとゾロとの間の距離が、この一瞬、接近しすぎていたことが、メッシーナの敗因になった。Del Pieroのスピード、ボールを取る技術が輝いた。
前半修了間近、Giannichedda腕を負傷。その後のプレーは生彩を欠いた。Vieiraは負傷。これでBuffonのいないGKに続いて、中盤も弱体化。不安だ。